Agent event protocol リファレンス
コーディングエージェントの hook が実行状態を Mytty に報告するためのワイヤープロトコルです。トランスポート、provider ごとのアダプタ、mytty-agent-hook helper、provider 別インストーラーはすべて実装済みです。出典は Sources/MyTTYCore/AgentEvent.swift、Sources/MyTTYCore/AgentHookBridge.swift。どの provider がどの event kind を発行するかは Agent providers を参照してください。
環境変数
Mytty の各ターミナル surface には次の3つの環境変数が渡されます。
MYTTY_EVENT_SOCKET
MYTTY_SURFACE_ID
MYTTY_EVENT_CAPABILITY
MYTTY_EVENT_CAPABILITY はその surface に限定して event 送信を許可するものです。ターミナル入力、画面キャプチャ、他 surface の event を許可するものではありません。surface が閉じられると Mytty はこれを失効させます。
Codex だけは例外です。Codex はセッションを共有のバックグラウンドプロセスの中で動かすため、Codex の hook には、そのセッションのペインではなく、このプロセスを最初に起動したペインの環境変数が引き継がれます。そのため Mytty は Codex の event では capability と event.surfaceID を見ず、event.sessionID からペインを決めます。詳しくは Codex のペイン判定 を参照してください。mytty-agent-hook codex は環境変数があればそのまま送り、なくても動作します。
トランスポート
MYTTY_EVENT_SOCKET に接続します。パーミッション 0600 のユーザー専用 Unix stream socket です。1接続につき UTF-8 の JSON エンベロープを1つ、改行終端で送ります。リクエストの最大サイズは 64 KiB です。日時は ISO 8601 です。
{
"schemaVersion": 1,
"capability": "MYTTY_EVENT_CAPABILITY の値",
"event": {
"schemaVersion": 1,
"id": { "rawValue": "B9AA8B83-B42D-4C11-B838-36B84C73032A" },
"runID": { "rawValue": "74C4B46D-9251-46AD-9200-61C97D98D43D" },
"sessionID": "0190f6f3-2a50-7000-8000-000000000001",
"surfaceID": { "rawValue": "MYTTY_SURFACE_ID の値" },
"provider": "codex",
"kind": "approval-requested",
"occurredAt": "2026-07-16T07:00:00Z",
"message": "Approve the dependency update."
}
}
サーバーは JSON レスポンスを1つ返して接続を閉じます。
{ "ok": true, "inserted": true }
同一イベントの冪等なリトライは inserted: false を返します。不正な JSON、認可失敗、サイズ超過、内部ストレージ障害は ok: false と安定したエラーコードを返します。認可失敗のレスポンスに capability の値がそのまま含まれることはありません。
エンベロープのフィールド
| フィールド | 型 | 備考 |
|---|---|---|
schemaVersion(外側) |
Int | エンベロープのスキーマバージョン、現在は 1 |
capability |
String | その surface の MYTTY_EVENT_CAPABILITY と一致していること。codex では見ない |
event.schemaVersion |
Int | event のスキーマバージョン、現在は 1 |
event.id |
{rawValue: UUID} |
hook が同じイベントを再送するときも変わらないこと |
event.runID |
{rawValue: UUID} |
1回の agent run(1プロンプト/1ターン)の間は変わらない |
event.sessionID |
String? | provider 自身のセッション/会話識別子。その provider がフォアグラウンドのエージェントである間だけ表示される |
event.surfaceID |
{rawValue: <MYTTY_SURFACE_ID>} |
そのペインの MYTTY_SURFACE_ID と一致していること。codex では見ず、Mytty が決めた値に置き換える |
event.provider |
String | codex、claude-code、opencode、antigravity、cursor のいずれか |
event.kind |
String | 下記の event kind 一覧を参照 |
event.occurredAt |
String | ISO 8601 タイムスタンプ |
event.message |
String? | 承認プロンプトの文言など、人間可読の補足情報(任意) |
event.hookName |
String? | 発信元 hook の名前。Mytty が provider の hook から受け取ったのではなく自ら合成した event の場合は mytty. で始まるマーカー(例: mytty.native.commandFinished、mytty.startupSweep)になる ── 「ネイティブ推定による run 検出」を参照 |
Event kind 一覧
AgentEventKind(ワイヤー上の値):
| Kind | 意味 |
|---|---|
started |
新しいプロンプトまたはターンが始まった |
running |
input/approval 待ちのあと処理が再開した |
input-requested |
エージェントがユーザーからの自由入力を必要としている |
approval-requested |
エージェントが承認/却下の判断を必要としている |
succeeded |
run がエラーなく完了した |
failed |
run がエラーで終了した |
disconnected |
provider プロセスの切断により run が終了した |
reducer は、run が succeeded/failed などのあと静かになった時点で内部的な idle という AgentRunState も導出します(これはワイヤー上の event kind ではありません)。Sources/MyTTYCore/AgentEvent.swift の AgentRunState を参照してください。
Lifecycle のルール
hook は待ち状態や終了を表すイベントより前に started を発行してください。input/approval 待ちのあと処理が再開したら running を発行してください。人間が読むターミナル出力をパースしてこれらの event を合成することは禁止です。構造化された hook payload のみを使います。
通知パネルの item 生成
Mytty が通知(Attention)パネルの item を作るのは次の場合のみです。
- 承認リクエスト
- 入力リクエスト
- failure
- disconnect
- 5分以上動き続けた成功実行
確認済み、あるいは何らかの形で解決済みの item は、解決から24時間はパネルに残り続けます。
レスポンスコード
AgentEventServerResponse は ok、inserted(成功時のみ設定)、error(失敗時のみ設定される安定したコード文字列)の3フィールドを持ちます。
| レスポンス | 意味 |
|---|---|
{"ok": true, "inserted": true} |
event を受理し、新規に記録した |
{"ok": true, "inserted": false} |
すでに記録済みの event(同じ event.id)の冪等なリトライ |
{"ok": false, "error": "request-too-large"} |
エンベロープが 64 KiB 上限を超えた |
{"ok": false, "error": "unauthorized"} |
capability がその surface の MYTTY_EVENT_CAPABILITY と一致しなかった。codex の場合は、セッションを 1 つのペインに特定できなかった、または sessionID がなかった |
{"ok": false, "error": "invalid-request"} |
エンベロープを期待する JSON 形式としてデコードできなかった |
{"ok": false, "error": "internal-error"} |
Mytty 側で event の保存に失敗した |
Codex のペイン判定
codex の event では、Mytty はすべてのウィンドウにある Codex のペインを対象に、event.sessionID だけでペインを決めます。次の順に調べます。
- そのセッションの transcript を、ペイン自身の Codex プロセスが開いているペイン。
- 以前の event で、このセッションに結びつけたペイン。
codex resume <session-id>で起動されたペイン。- まだ何にも結びついていない Codex ペインのうち、作業ディレクトリがセッションの transcript に記録された作業ディレクトリと同じものが 1 つだけある場合、そのペイン。対象になるのは、ユーザーが対話で使っている Codex(
codex-tui)の transcript だけです。サブエージェント、codex exec、デスクトップアプリのスレッドがペインに結びつくことはありません。 SessionStartかUserPromptSubmitの event に限り、同じ作業ディレクトリにあるペインのうち、古くなっている可能性のある結びつきが残ったままのものが 1 つだけある場合、そのペイン。Codex の画面で/newや再開をした場合がこれにあたります。
結びつきは、ペインを閉じるか、ペインの Codex プロセスが入れ替わると消えます。どのペインにも当てはまらない場合や、複数に当てはまる場合は、推測せずに unauthorized を返します。特に、同じ作業ディレクトリに、まだどのセッションとも結びついていない Codex のペインが 2 つあると区別できず、どちらかが結びつくまで、その作業ディレクトリでの新しいセッションの event は拒否されます。また Codex がセッションの transcript を書くのは最初のプロンプトを送ったときなので、それより前に届く event(起動直後のセッションの SessionStart)も拒否されます。
ネイティブ推定による run 検出
hook integration が未インストールの provider についても、Mytty は run の開始と終了を自力で検出します。ペインのフォアグラウンドプロセスにどの agent 実行ファイルが立っているかを監視し、フォアグラウンドのコマンドが終了したことを shell が OSC 133 で報告するのを読み取ります。この方法で合成された event は、provider 自身の hook 名の代わりに mytty.native. で始まる event.hookName(mytty.native.launchObserved、mytty.native.commandFinished、mytty.native.processExited)を持ち、event.sessionID は常に null です。hook payload から読み取れるセッション識別子が存在しないためです。
この推定が動くのは、その provider の integration status が未インストールの間だけです。hook をインストールすればその provider の run は再び hook 自身の報告に一本化され、ネイティブ推定は関与しなくなります。より一般的に、mytty.native. に限らず mytty. で始まる hookName はすべて、Mytty が自ら合成した event(provider の hook から受け取ったものではない event)を表します。詳細は Sources/MyTTYCore/NativeAgentRunEstimator.swift と Sources/MyTTYCore/AgentHookEventAdapter.swift を参照してください。
Claude Code、Codex、Cursor に限っては、さらに一歩進んだ推定を行います。session inspector がポーリングのたびに読んでいるモデル名・残りコンテキスト用のローカルデータ ── Claude Code と Codex は transcript、Cursor は store.db ── を使って、この粗い1本の run をプロンプトのターンごとの run に分割し、実際の hook integration が報告する内容(新しいプロンプトで UserPromptSubmit、ターン完了で Stop)に近づけます。その読み取りがターンを報告した時点で、プロセス単位の粗い run は idle になり、以降は mytty.native.turn* 系の event.hookName(mytty.native.turnStarted、mytty.native.turnCompleted など)を持つターンごとの run がライフサイクルの報告を引き継ぎます。各ターンの run ID は、そのターンに対して provider 自身の hook が使うのと同じターン識別子(Claude Code はプロンプト ID、Codex はターン ID、Cursor は会話 ID とプロンプトの blob 自身の rowid の組)から導出されるため、途中から hook が効き始めた場合や、hook を持たない Claude Code の ESC 中断処理も、別の run を新たに作らず同じ run に着地します。Cursor は中断されたターンに対する記録を一切書き込まないため、Cursor のターンの phase が .interrupted になることはありません。放棄されたターンを終わらせるのは、ネイティブ推定の run でも引き続きプロセス終了です。
起動時には、他の処理が run 状態を読む前に、前回の app インスタンスが非終端のまま残した run を Mytty がログから検出して掃除します。ペインプロセスは app と運命を共にするため、クラッシュ・強制終了・SIGKILL のあとで running/waitingInput/waitingApproval のままの run は死んでいるとしか考えられません。この run に対して合成した disconnected event を記録します(event.hookName は mytty.startupSweep)。
参考
- Agent providers: 設定ファイルの場所、provider ごとの hook と event の対応、status bar / session inspector の情報源をまとめています。
- mytty-ctl リファレンス: このプロトコルが生成する
AgentRunStateを読み取るlist/waitの仕様を扱います。